かがみ歯科医院
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皆様、こんにちは!
歯科衛生士の市川です
テレビCMなどで「フッ素入り歯磨き剤でムシ歯から歯を守ろう!」と、耳にする機会もあると思いますが、 フッ素で本当に守れるのか?フッ素の効果に疑問をお持ちの方や、お母様方々の中にはお子様のフッ素利用について安全性に不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな皆様のフッ素に対する疑問や不安にお応えするため、フッ素の安全性、効果、正しい使い方などを、数回に分けてご紹介させて頂こうと思います。
フッ素の利用は、WHO(世界保健機関)をはじめ世界の150以上の保健関連団体がフッ素の安全性・効果を基にその利用を推奨しており、日本においても、日本歯科医学会や厚生労働省、日本口腔衛生学会などからムシ歯予防に有効であると推奨されています。
厚生労働省のHPにより詳しく記載されていますので、URLを添付します。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-006.html
また、日本口腔衛生学会では、フッ素を推奨するにあたっての根拠となるデータも公表しており、『フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方』より抜粋し、以下に紹介させて頂きます。
『フッ化物配合歯磨剤は、家庭や職場でのセルフケアによるう蝕予防手段として、欧米の先進諸国では1970年代から80年代にかけて急速に普及し、小児う蝕の急激な減少をもたらしたことは高く評価されている。
その結果、歯磨剤に対する考え方も下記に示す表1のように、これまでの「歯磨きの補助剤」から、「積極的な予防剤」へと変化してきている。』
上記のデータにより、今まではハブラシで磨く事が1番のムシ歯予防と考えられていたことが、今はフッ化物配合歯磨剤を使用した方がムシ歯予防に効果があるということが実証されています。
更に詳しくお知りになりたい方は下記のURLをご覧下さい。
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:c835e6b3-5e2f-4043-842d-26a5af5c7d66
WHO(世界保健機関)をはじめ、厚生労働省、日本歯科医師会など、国内外の専門機関が一致してフッ素を推奨しています!!
そもそも、皆様はフッ素はどういうものかご存知でしょうか?
フッ素とは、自然界に広く存在する物質であり、原子番号9の元素です。
自然界では土壌に多く含まれ、他にも海水など、さまざまな物に含まれます。
また、緑茶やウーロン茶、海産物、肉、野菜、果物など色々な飲食物にも含まれています。
フッ素は自然界に広く存在する物質で、私達は日常生活の中で飲食物と共に常に摂取しています!!
私達が普段から口にするものに含まれている物なので「フッ素=危険」というわけではありません。
それでも、フッ素は危険だと言われるのはどうしてなのでしょうか?
元素のフッ素単体だと、ガラスやプラスチックを溶かすほどの酸化作用があり、人間にとっては猛毒です。
その為、フッ素塗布は危険、子供にはフッ素は塗らない方がいい、というイメージや意見があるのかもしれません。
ですがフッ素は単体では安定せず、反応性がとても高いので単体元素が酸化しすぐに化合物(フッ化物)を作り、毒であるフッ素単体の状態では殆ど存在できません。
つまり、フッ素単体は危険なものだとしても、すぐ反応して化合物となるため問題ないのです。
歯磨剤や歯科医院で実際に使っている物は安全性の高い「フッ化物」で、単体のフッ素とは全く異なります。
フッ化物の状態であれば非常に安定しており、ナトリウムとフッ素が結びついた「フッ化ナトリウム」という状態では、ムシ歯予防に対して非常に効果的であり、市販の歯磨剤にも配合されている成分です。
フッ素と言っていますが、正しくは「フッ化物」であり、単体で身体に摂取されることは決して無いので危険性は全く無く、フッ素入り歯磨剤は実はフッ化物配合歯磨剤なのです。
ムシ歯予防に使うのは「フッ化物」であり、「フッ素」ではありません。
とてもややっこしいですね。
フッ素単体は危険なものだとしても直ぐ反応して化合物となるため問題なく、ムシ歯予防に使用されているフッ化物はフッ化ナトリウムです!!
※正しくは「フッ化物」ですが、フッ素の方が聞き馴染みがあるかと思いますので、本文では下記でもフッ化物をフッ素と記載させて頂きます。
尚、一部引用文に関しましては、フッ化物との表記があります。
フッ素はフッ素でも「PFAS(ピーファス)」という「有機フッ素化合物」は、フッ素と炭素の結合を含む人工化合物の総称で人体や環境に対して有害であるとされ世界中で規制や禁止をしています。
フライパンの焦げ付き防止や、自動車のコーティングなどに使用するフッ素は、フッ素と炭素の結合を含む有機フッ素化合物です。
有機フッ素化合物は、自然界では分解しにくく水に蓄積する事が解り、これが人体に様々な悪影響を及ぼすことが問題となっています。
歯科でムシ歯予防に使用しているフッ素は、主にフッ化ナトリウム(NaF)や、モノフルオロリン酸ナトリウム(Na2PO3F)などで、水に溶けた時にマイナスイオンになる無機フッ素化合物です。
無機フッ素化合物は、歯の表面に塗布することで歯の表面にあるエナメル質(ハイドロキシアパタイト)が酸によって溶け出す事を防ぎ、溶け出したエナメル質を再石灰化(再結晶化)させます。
そして、エナメル質中のカルシウムやリンよりも強固な結合を持つフルオロアパタイトを形成し、ムシ歯菌の代謝活動や酸産生能力を抑制します。
ムシ歯予防に使われるフッ素は「無機フッ素化合物」であり、名前はよく似ていますが「有機フッ素化合物」とは全くの別物です。
一部のフッ素が有害だからと言って、ムシ歯予防に使っているフッ素も有害なわけではないのです。
これを混同して、「フッ素は危険で、世界中で禁止されている」という話が出ているのかもしれず、フッ素の反対論については誤解に基づくものが多いように感じます。
日本小児歯科学会が発表しているデータがありますので、更に詳しくお知りになりたい方は次のリンクをご覧下さい。
日本小児歯科学会 PFASと歯科で使用する無機フッ素化合物について(外部pdfファイルを開く)
フライパンなどに使われる有機フッ化物は体に有害ですが、歯磨剤などに含まれるフッ素は無機フッ化物であり健康被害はありません!!
フッ素は適量を適正に使用すればムシ歯予防に効果があっても、 量や使用方法を間違えると体に悪影響を及ぼしますので、特に小さなお子様へのご使用は注意が必要です。
一気に過剰な量のフッ素を飲むことによって、下痢や嘔吐・吐き気・けいれんなどが起こる事があります。
フッ素の急性中毒の発現量は2〜4mg/1kgとされており、 約10kgのお子様であれば、20mgのフッ素量で中毒症状が出る可能性があります。
例えば、お子様用のメジャーな歯磨剤の1つでチェックアップのバナナ味であれば500ppmで内容量60gなので、体重約15kgのお子様が1本丸々飲み込んでしまうと急性中毒量に達する可能性があります。
通常の歯磨き時に少量飲み込んでしまっても、中毒が起こる事はまず有りませんのでご安心下さい。
長期間、飲料水などにより過剰なフッ素を摂取することによって起こり、「歯のフッ素症(班状歯)」と、「骨のフッ素症(骨硬化症)」があります。
飲料水のフッ素の適量が0.8-1.2ppmとされる中、 「歯のフッ素症(班状歯)」は2ppm以上、「骨のフッ素症(骨硬化症)」は8ppm以上の濃度の飲料水を、20年以上長期間摂取し続けた事が原因で起こると言われています。
日本では安全な濃度に設定されていますので心配はご無用です。
上記のように急性中毒や慢性中毒を含め、フッ素がどのように歯に影響を与えるのかが研究され、過剰であれば歯がまだらになり歯のフッ素症が現れる事が解り、その一方では過剰でなければまだらになることはなく、ムシ歯が少なくなることが判明しました。
その後フッ素によるムシ歯予防の研究が重ねられ、フッ素を歯に応用することの安全性と有効性が確認されたので、1964年に国際歯科連盟がムシ歯予防としてフッ化物応用を推奨しました。
そして、1969年にはWHOもフッ化物応用の推進勧告を発信し始め、今から半世紀以上も前のことです。
現在では、世界中の多くの国と地域において様々な種類のフッ素の応用が実践され、ムシ歯予防に貢献しています。
フッ素の量や使用方法を誤ると体に悪影響を及ぼしますが、適量を適正に使用すればムシ歯予防の効果が絶大です!!
フッ素は、指示された量を守って使えばムシ歯予防に大変効果があり、世界中の学者や専門家により研究が行われ安全性も確認され、既に半世紀以上も世界の国々で使用されています。
下記のグラフでは、成果の上がっている国々に対して、日本の減少率の低さが読み取れます。
その後、日本歯科医学会では医療環境問題検討委員会フッ化物検討部会で、フッ素利用の安全性に多角的に検討を加えて証明を行い、1999,12に「フッ素はムシ歯を予防する効果がある」と発表しています。
また、下記の表では、米国予防医学研究班がエビデンスレベルを元にムシ歯の予防方法を評価した物においても、フッ化物応用は根拠の質でⅠ、勧告の強さでAと、共に最高ランクのムシ歯予防法として位置づけられています。
フッ素使用によるムシ歯予防には確かなエビデンスがあります!!
以上の事からも、ムシ歯予防の為のフッ素利用については学問的にも有効性や安全性が充分に確立されており、 WHOでも加盟各国に対してフッ素利用によるムシ歯予防を実践するよう勧めています。
実際に日本でもフッ素の効果は実証されており、 中毒などの可能性もゼロではありませんが、正しく扱えば安全性も高くムシ歯予防にも高い効果のある方法なので、使用量や使用方法に気を付けて上手く利用していくと良いのではないかと考えています。
ここまでの長文をお読み下さり有難う御座いました。
皆様のフッ素への不安感や、疑問などが、少しでも払拭出来る内容であったら嬉しいです。
次回は、フッ素の効果をお伝えしたいと思います。
歯科衛生士 市川
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